管内空気の振動のようす Home page

  [Kan]= 甲(かん) : 1オクターブ上の音 ←→ 乙
[RO]=ロ/ [TU]=ツ/ [RE]=レ/ [TI]=チ [HA]=ハ(琴古流では[リ,ヒ])/ [HI]=ヒ(琴古流では[イ])


空気柱
尺八管内の空気(以後「空気柱」と呼ぶ)が上のように振動して音が発生します。空気柱がバネのように伸び縮みしてるわけですが、これが1秒間に440回くらい繰り返されると、ドレミでいう「ラ」、尺八の1尺8寸管ならば「チ」、の音程になります。空気柱が短くなるほど振動は速くなり、音程が上がります。
チェックボックス[Kan]をチェックすると、左半分が伸びているときは右半分は縮んでいるという、なんとも面白い、美しい振動形態になります。片方だけ見れば、長さが半分になっているので(あたりまえ)、振動数は2倍になり、1オクターブ上の音になるというわけです。だから、「甲のロ」と「乙のヒ」は同じ音程になります。

管端補正量とは?
上の振動のようすは、わかりやすいように、ゆっくりと、また、おおげさにしています。
実際の振動では、「乙のロ」を出している場合、管尻(管の右端)のすぐ外側の空気も一緒に振動しているので、空気柱は管尻の方向に数ミリ伸びているとみなします。これを、管端補正量、あるいは、開口端補正といいます。振動工学とかいう本によると、この長さは「内径かける0.3」ということになっていますが、尺八の場合、内径が一定でなく、また、管尻あたりはラッパ状に広がっているので、この通りの計算にはなりません。で、何ミリになるかというと...まあ、4ミリくらいでしょうか(うーん、ちょっといいかげん)。
歌口の部分では、唇で開口面を大部分塞ぐので、空気が出入りしにくくなり、管尻部分よりも大量の空気を動かしているとみなすことができます。これを管長に直すと、約4センチになります。つまり、歌口部分の管端補正量は、約4センチということです。1尺8寸管は、約54.5センチですが、空気柱の長さは、この値に歌口部分と管尻部分の管端補正量をたして約58センチから59センチ、とみなさなければなりません。

メリ・カリ
歌口部分の管端補正量は、開口面を塞ぐ割合によって変わります。開口面全体に対する塞いでない部分の割合(以後「開口率」と呼ぶ)が小さくなれば、空気の出入りはますますしにくくなり、管端補正量は大きくなります。その結果、空気柱が長くなり、音程が低くなります。これが「メリ」の正体です。つまり「メル」というのは「開口率を小さくする」ということです。逆に、「カル」というのは「開口率を大きくする」ということです。時々、「メリ・カリは歌口に吹き付ける息の角度を変えることである」と思っている人がいますが、これは間違いです。
指孔部分にも、歌口部分と同じ現象が起こっています。つまり、指孔部分にも「メリ・カリ」があるということです。

材質と音
尺八の音の発生源は空気柱の振動です。尺八自体は全く振動しません。このように、楽器自体は全く振動せず、楽器内部の空間の空気(ほとんど楽器では円柱形になる)の振動によって音を発生させる楽器を、「気鳴楽器」と言います。この種類の楽器には、尺八のほかに、フルート・リコーダ・横笛・オカリナなどがあります。
「気鳴楽器」の材質は、音色にはまったく関係ありません。なにしろ材質はぜんぜん振動しないのですから。だから、例えばフルートが金で出来ていようと銀で出来ていようと音色には全く影響を与えません。
なぜ、あなたは金のフルートを吹くのですか、と聞かれたランパルはこう答えています。
「金で出来た時計が好きな人がいるでしょう。それと同じですよ。」
尺八の場合も同じことです。よく、「木製の尺八はダメだ。竹の音がしない」とか「竹質が硬い竹ほどよく響く」とかいいますが、これは完全な勘違いです。単に「そんな感じがする」、「錯覚」、「人がそう言うので、そう思っている」ということです。音・音色にとって重要なのは、「尺八が何で出来ているか」ではなく、「内部の空間や歌口がどういう形になっているか」なのです。ですから、楽器の性能という点では、「竹」という素材にこだわる必要はありません。


ランパルと書くところ、ずっとカラヤンと書いていました。:3ミ (←ばかぼんのパパ)
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